横浜美術館リニューアルオープン記念展
新しい×(作り方+分かり方)
「ピタゴラスイッチ」 「バザールでござーる」 「だんご3兄弟」 「スコーン」 「モルツ」 「ポリンキー」 「I.Q Intelligent Qube」 「0655/2355」 ・・・。
これらがひとりの人によって生み出されたという驚きから、その「作り方」を知る楽しみへ――。
TVコマーシャル、教育番組、書籍、ゲームなど、さまざまなメディアを通じて発信される斬新かつ親しみやすいコンテンツにより、1990年代以降のメディアの世界を牽引してきた佐藤雅彦。ひとりの人間がこれほど多種多様な作品群を生み出したことに、誰もが驚くことでしょう。
佐藤の創作活動の軌跡をたどる世界初となるこの展覧会では、佐藤が表現者/教育者として世に送り出してきたコンテンツを一堂に紹介し、「作り方を作る」という思想に裏打ちされた独創的なコミュニケーションデザインの方法論を明らかにします。
作り方を作る
佐藤の創作の根幹にあるのは、作品を「作る」より手前の、「作り方を作る」という姿勢にあります。そうして生み出された数多くの「作り方」をもとに、TV−CM、教育番組、ゲーム、アニメーション、映画、数学や経済や漫画の書籍など、一見無秩序にも見える、メディアを問わない作品群が生まれてくるのです。
佐藤の創作の大半は、その「作り方を作る」ことに費やされていると言ってもいいでしょう。
キャラクターはちょっと苦手
佐藤雅彦は、誰もが知っている「バザールでござーる」「だんご3兄弟」「ポリンキー」などの親しみやすいキャラクターの作者でもあります。それらの知名度の高さゆえ、とかく佐藤はキャラクター・クリエイターだと思われがちです。しかしその実、佐藤は自身のことを「キャラクターが苦手」だと語ります。
キャラクターは、受け手により強く訴えかけるために必要なときにだけ繰り出される、ひとつの方法なのです。
むしろ苦手なものだらけ
キャラクターから距離をとる佐藤の態度は、昔から絵を描くことが苦手だったことも一因のようです。佐藤は、文章を読むことも苦手、音楽も苦手だったと言います。それらの苦手なものが、ことごとく佐藤の主要な表現手段になっているのは、佐藤が自身の作った方法論に従順だからなのです。
その佐藤独自の手法を知れば、みなさん自身の苦手なものへの意識も変わるかもしれません。
意識を、生活をデザインする
佐藤は自身の創作を「新しい分かり方の供給」と定義します。体験者に新たな感覚や気づきをもたらす《計算の庭》《指紋の池》などのインタラクティブアートはその最も分かりやすい作例です。
また、既存のメディアの特性を利用して、人々の行動や思考に変化をもたらすことを意図した作品も数多くあります。朝晩の5分間で日本のリズムを作ろうとする「Eテレ0655/2355」は、その典型です。
本当にやりたかったのは、教育
幼少期から、人にものを教えることがなによりも好きだったという佐藤。単に知識を伝えることではなく、ものごとの仕組みや考え方を教えることに関心をもっていたところが佐藤ならではです。展覧会後半では、慶應義塾大学佐藤雅彦研究室を舞台に展開する、「教育」と「創造」とが一体になった佐藤の活動を紹介します。
展覧会図録
『作り方を作る』 左右社、2025年
40年にわたる創作活動について、佐藤雅彦自身が書き下ろし、幅広い活動の全容をつたえる初めての一冊。